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【インタビュー】歯科麻酔科医:長坂 加奈 ながさか かな

「本当に痛くなかった」が実現できる麻酔、あります。

目次

歯医者で昼寝しながらインプラント・抜歯が出来ます
歯の麻酔にはアドレナリンが入っている?!
「もっと早く知っていたらこんなにならなかったのに」歯科恐怖症の方の一言

歯医者で昼寝しながらインプラント・抜歯が出来ます

歯医者さんに麻酔の先生がいるのは素人からすると「なんで?」って感じです。歯科の麻酔は「痛いのを止める」以外に出来ることがあるのですか?

皆さんがよく知っている歯の麻酔は、歯を抜くときや神経を触る処置に使う「局所麻酔」です。
私たち「歯科麻酔科医」がやる麻酔は、口だけでなく点滴を取って体全体にかける「静脈内鎮静(じょうみゃくないちんせい)」(リラックス麻酔・睡眠麻酔とも呼ばれます)です。

静脈内鎮静は、どんな時に使うのですか?

歯医者さんに対して不安や緊張が強い方、治療はできるけど手術になると不安な方、
障がい者の方が治療ができるように鎮静を行うこともありますし、歯科恐怖症やえずいてしまう方にも使っています。
痛みをほとんど感じることなく、ラクに緊張せずリラックスした状態で治療を希望されている場合です。
あとは、全身疾患をたくさんお持ちの方は安全な状況を作るためにかけますね。

全身疾患とどう関係あるのですか?

例えば、血圧。
血圧が元々高い方にストレスを与えるとさらに高くなります。
狭心症や心臓疾患などもストレスをかけると発作が起きてしまったり。
喘息だったり、甲状腺の疾患、不整脈、なんでもですが、歯科治療や手術をきっかけにして起こり得る危険を事前に避けたり、起きてしまった際も対応できます。

なるほど、そんなメリットもあるんですね。メインの静脈内鎮静の使い道を教えてください。

インプラントの手術、親知らずの抜歯、上顎洞(じょうがくどう:上の歯のさらに上の空洞部分)を触るような外科処置(インプラントの際に骨を足す場合など)、歯の根の治療などが、よくある治療です。
長時間口を開けてなきゃならないような処置にも適しています。
口をずっと開け続けているって結構つらいと思うんですけど、そんな治療も点滴の麻酔をするとあまり気になりません。

長時間とは具体的にどれくらいですか?またどんな治療ですか?

1時間以上あけてるとなると、長いなーと思います。30分以上お口を最大で開け続けるのって、きつくないですか?私は10分に1回は閉じてしまいそうです。笑
治療をまとめて何本も行う、大変な抜歯、インプラントを複数本埋入(まいにゅう)するような治療は長くなりがちです。

そんなにインプラントっていっぱい入れられるのですね。1~2本がせいぜいかなと思うのですが。

はい、いろんな形があります。

多くのインプラントを埋入した時、ご飯は食べられるんでしょうか?

いきなりかたい物や辛い物は食べれませんが、全く食べれないわけではなく、おかゆやお豆腐など、皆様工夫してくださっているように思います。
麻酔サイドでは、術後に食べていけないものはないです。

静脈内鎮静法の麻酔は、どれくらいの時間で効くのですか?

点滴さえ取れれば、30秒~数分でスッと眠らせてしまいます。

麻酔から覚めた寝起きは?フラフラしたりしますか?

最速10分、かかって1時間で、七條先生の医院では今の所15分以内にはご帰宅されています。
私の場合、平均15分くらいで帰れるようにタイミング・種類・量を調整しています。
高齢の方は薬の抜けがゆっくりなことが多いですね。
ふらつく事もありますので、歩きやすい靴でいらしてくださいね。

胃カメラを麻酔付きでやったことがあるんですが、寝た時と起きた時の場所が違っていて・・・あれと同じですか?

そうです!それと同じものを使っているので、あの感じで歯の治療しているイメージです。
うたた寝しているというイメージです・・・歯医者で昼寝が出来たらいいな、と。

歯医者で昼寝!いいですね!でも、自費ですよね。その満足度、お金かけてやってよかったと患者さんが思っているのでしょうか?

私、インスタグラムで患者さんの感想を載せたりしているのです。
だいたい「よかった」とか、「もう終わったの?」とか「これから始まりますか?」とか「1時間半も経っていたのですか?」など、そういうコメントが多いです。「ああ~よく寝た~」という方もいます。

「ちゃんとお金払ってよかった」と思っている方が多いということですね。

そう言っていただけるようにと思ってやっています、安くはないので。

歯の麻酔にはアドレナリンが入っている?!

「怖い」と「血圧が上がる」が上がるのは本当ですか?血圧が上がると、出血も増えるのでしょうか?

まず、血圧が高い方に「局所麻酔」をすると、よけいに血圧が上がるのです。

歯の麻酔をすると、血圧が上がるのですか?

そうです、局所麻酔は血圧が上がる成分「アドレナリン」が入っているんです。

「歯の麻酔」に「アドレナリン」が入っているのですか?!

入っています、歯科の局所麻酔には。
アドレナリンのおかげで出血も抑えられています。
少ない量であれば血圧にそんなに関係ないよと言われているんですが、大きい処置で数本使用しなきゃならない時は20~30%血圧が上がっちゃうんです。
手術の怖さで血圧が上がったところにアドレナリンをドン!と入れると、急に血圧がドン!と上がってしまい脳の血管が切れたり、詰まっていた血栓がピュッと圧で押されて他の箇所で詰まったり、と危ないです。
そういったリスクを「点滴の麻酔(静脈内鎮静法)」をすることで、血圧を安全な値に一定にしたり下げたり出来ます。

なるほど。ちなみに、点滴に血圧をコントロールする薬を入れることもできるのですか?

できます。麻酔の薬で緊張がなくなり血圧が普段のリラックスした時くらいになります、それでも血圧が上がる人には下げる薬を使います。

ドラマでよく見るこういうのを見ながらやるわけですね。


歯科麻酔医がいい麻酔が掛けられているときは、先生も集中出来ていい治療が出来ると思います。

歯科医師でも麻酔のことを分かっている人とそうでない人がいる?

大学では勉強しますが、忘れてしまった先生が多いのではと思います。
口腔外科や障害者歯科の先生、全身疾患やバイタルサインを確認する機会が多い先生は詳しい方もいらっしゃいます

平日の日中にもインプラント手術があるそうですが、年齢層は?

高齢者の方から若い方もいます・・・30〜40代の方は入れ歯は嫌だとおっしゃる方もいらっしゃいます。
まだまだ歯を使いますし、口元を見られますし。

麻酔が効いている/効いていないは、どうやって判断するのですか?

目の開き具合、唇、口の開き具合、意識レベル、筋肉のゆるみ具合、バイタルサイン(血圧だとか)、いろんな情報をキャッチして判断しています。
例えば、遠くでお名前を読んだ時に返事がなくなる・・・です。
あとは、手を握った時に握り返してくれると「まだしっかりしているな」と思います。
酔っぱらった時や爆睡している時って、誰かに触られても分からないし、ダランとしている・・・あの感じが出ると「麻酔効いているな」と思います。
術中も効いているかを見ながら、麻酔の量を調整します。
あとは、生体モニター(血圧、酸素の値、心臓の動き)も、必ず確認しています。
血圧が急に上がったとか、脈が急に早くなったとか、呼吸が弱くなってくると酸素の数字も下がるので、数字の上がり下がりで痛みや不快な事、危険を判断しています。

さすが麻酔の専門医ですね!ところで、なんで歯科麻酔科医を選んだのですか?

特殊ですよね。全部の歯医者の中でも専門医は数パーセント(確か全体の0.3%程度)しかいないんですよ。
ちょっと面白い、みんなと同じ生き方は面白くないという考え方があったので。(笑)
スキマ産業みたいなものが好きで。
みんなができる事を習得するより、あまりやりたがらない事を習得した方が希少価値があるなと。
それと、歯科麻酔であれば大学病院で様々な診療科の治療がみれるので、口腔外科、一般治療、障がい者、小児、高齢者、全身疾患、薬もわかるし、最強だなと思っていました。

歯医者が嫌われる理由は「痛い、怖い」なんです。歯医者がトラウマになっている人も年齢が上がれば上がるほど多いです。「怖いから」「痛いのはイヤだ」という理由でお願いすることもできるのですか?

はい。歯科恐怖症の方も、そうでないけど怖いと感じている方にも、静脈内鎮静をかけます。
歯医者さんのホームページを見て「痛くない」と書いてあるから安心していったら「痛かった!書いてあることと違う!」という方がいました。
結局、局所麻酔は最初のチクっと入れる注入圧でそれなりに違和感が出てしまいますし、痛みの感じ方って本当に人それぞれなので。。
痛みを限りなくゼロにすることは難しい・・・やっぱり「やられている感じ」はする、我慢できるレベルには下げるけど、という感じです。
一方、点滴の麻酔は一時的に記憶を消したりもできるので、「本当に痛くなかった」を実現できます。
でも、医療なので100%はなくて、寝転んだ状態ですと窒息や誤飲のリスクがありますので、全部覚えていないようにすると危険だと判断した場合は、辛くない程度に少しわかるようにしたりもします。
「どうしても、局所麻酔(きょくしょますい)ところだけ覚えていないようにしてほしい」といわれたら、そこだけをわからないようにしたりもできます。

そんな事が出来るんですね!ちなみに、歯に注射で麻酔する前にする「表面麻酔」は、麻酔専門医から見るとどうですか?

使ってあげた方がいいと思っています。最初のチクっとする感じが減りますし、これだけで痛くないと感じる方もいらっしゃいます。
信頼している先生は痛みを感じにくい・・・痛みを感じ方は人によって違います。
構えていると、何をされても痛い・怖いは強くなります。
恐怖症の方は常に構えている・・・過去の痛い思い出でよりストレスがかかるので危ないことも起きやすいです。

珍しい静脈内鎮静の使い方はありますか?

どうしても嘔吐反射がひどくて、歯の型取りが出来ないけどマウスピースの替えが欲しいから型取りしたいという方がいらっしゃいました。
他の治療は大丈夫、型取りだけ絶対に無理!でも歯の大切さを理解してるから、マウスピースが必要。
我慢するくらいなら、点滴の麻酔でわからなくして欲しい。
5分くらいで終わる型取りのためだけにやった麻酔ですけど、それでもよかったと。

そんな麻酔の使い方もあるのですね。

「もっと早く知っていたらこんなにならなかったのに」歯科恐怖症の方の一言

でも今はまだ、歯科麻酔の認知度が低いのだな、と実感します。
歯科恐怖症の方は、言い訳ではなく、本当に歯医者さんに行けなくて・・・ボロボロになってから歯科医院にいらっしゃる患者さんを沢山みてきました。
「もっと早く知っていたらこんなにならなかったのに」とある患者様がおっしゃっていました。

歯医者さんにメールも電話もできない、勇気を出して予約をしたけど行く前の日から動悸がして、ドアの前まで来たけど無理だと思って帰っちゃう方もいます。
静脈内鎮静をキッカケに、歯科恐怖症の方もちょっとずつ慣れていって下さって。
麻酔の点滴をしながら治療をする事で歯医者という空間に慣れる、椅子に座ることが出来るようになって、手汗をかかなくなる、来院を重ねることで1個ずつクリアしていくんです。

それほど大変なのですね、歯科恐怖症の方は・・・。では、緊張をほぐすために今度は先生のことを教えてください。白衣のこだわりはありますか?

今日はクリーニングしたてのものできました。(笑)
胸ポケットついているものが好きで、ポケットがいっぱいあると嬉しいです。

休みは?

犬の散歩です、トイプードルのロン君、1歳2か月です!
私マスクしてると、目から上がキリッとしてて怖いらしくて。(笑)
集中してたり、真剣に仕事してるともっとキリッ!としてるみたいで。
麻酔の先生って怖いイメージがあるかもしれないですけど、優しそうな先生のイメージになってくれると嬉しいです。(笑)

麻酔科医は、注射を打ちにくるのですからね、怖いですよね!

怖い人じゃないです、優しいです。(笑)

先生、ホワイトニングとか矯正しています?

しています、ワイヤーとインビザライン両方やりました。

患者さんに一言お願いします。

手術が怖くてインプラントを迷っている方、多いと思います。
「無理かな?」と思った人にも可能性を作りたいので、ぜひ相談してください。
静脈内鎮静は、リラックス麻酔とか睡眠麻酔とか別の名前で言われている通り緊張をなくします!
不安や恐怖は薬を使ってなくします。
緊張を和らげた状態で手術ができまし、お身体の状態も、危なくならないようにみていられます。

薬で物理的に不安を和らげて、先生も優しければ、さらに安心できますね。

患者さんはすごく不安な状態で来ると思うので、キャラを使い分けます。(笑)
テキパキすぐやってあげた方が良さそうな方には迅速な対応、お話好きならお話をしますし。
リラックスしていただくために、1回は笑わせたいなと毎回思っています。(笑)
歯科麻酔科医は患者さんと1回しかお会いできない事もあり、まさに一期一会。
しかも最初と最後で10分、男かな、女かな、というレベルで結構覚えてもらえないです。
でも、覚えてないくらい麻酔がかかって、歯医者でリラックスしてもらえれば本望ですね。

取材後記

「麻酔科医という存在を知ってもらいたい」先生の一言です。
先生は優しいです!怖くないし威圧的じゃないです!
美人過ぎて近寄りがたい(笑)と思いきや、話してみるとソフトでした。
身を委ねる人なので、先生が優しいと前もって分かれば麻酔の効きもさぞかしよいかと思います。

薬を使うのがいい悪いという話は別として、我慢することが美徳、そうであるべき、と思うのはちょっと違うのかもな、と今回の話を聞いて考えが少し変わりました。
取材後、先生にインスタグラムのアカウントを教えてもらいました。
インスタを自分がよく見えるためのツールでなく、麻酔で楽に治療を受けられることを皆さんに知ってほしいという思いがひしひしと伝わり、怖くて歯医者に行けなくてむし歯だらけになる人が一人でも少なくなってほしいと思ってやっているだろうなと確信しました。
もっと静脈内鎮静が身近な麻酔になって、難しい治療のハードルを下げてくれたらいいなと心底思いました。

インタビュー:2023/1/31

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